【市場の目】中国経済を巡る問題は3中全会で解消されるのか?
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・西?M徹氏
中国経済を巡る問題は3中全会で解消されるのか?
内需の弱さ、不動産を巡る問題などが一足飛びに解消される見通しは立ちにくいのが実情
中国景気は指導部が掲げる「新質生産力」を追い風に供給サイドをけん引役にした底入れが促される一方、家計消費など内需は力強さを欠くなかで外需への依存度を強める展開が続いてきた。ただし、足下では需給のバランスを欠く状況が続くなかで4-6月の実質GDP成長率は前年比+4.7%に鈍化、前期比年率+2.8%と頭打ちの様相を強める動きが確認されている。今年前半の成長率は+5%と成長率目標並みを維持するも、ディスインフレ圧力がくすぶり、先行きは内・外需双方に不透明感が高まる展開も予想される。
6月単月の経済指標の動きも、鉱工業生産は前年比+5.3%に鈍化するも前月比は+0.42%と拡大が続いており、生産活動をけん引役にした景気底入れを示唆する動きがみられる。一方、小売売上高は前年比+2.0%に鈍化し、前月比も▲0.12%と減少しており、6.18商戦にも拘らず家計部門の財布の紐の固さを示唆する動きがみられる。固定資本投資も年初来前年比+3.9%、前月比+0.21%と新質生産力を支える設備投資が支える展開が続く一方、不動産需要の弱さは関連投資の足かせとなる展開が続く。当局による不動産在庫対策も効果も不透明ななか、不動産市況の低迷は幅広い経済活動の足かせになっている。
15日からの3中全会では指導部が進める「中国式現代化」に基づく方針が討議される模様の一方、金融市場では何らかの景気対策を期待する向きもみられる。しかし、事態の深刻度に対してこれまで公表された対応は小粒なものに留まるなか、今後も構造問題が中国経済の足かせとなる展開が続く可能性は高い。ミクロでみた中国とマクロでみた中国の間の差はこれまで以上に広がることに留意する必要があろう。