東京為替見通し=ドル円、トランプトレードと円買い介入の鬩ぎ合いか
15日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、パウエルFRB議長のハト派発言「過去3回のインフレ指標は信頼感を高めた」を受けて157.19円まで下落したものの、利下げ開始時期についての言及を避けたことで158円台まで反発した。ユーロドルは5月ユーロ圏鉱工業生産が予想を上回ったことで1.0922ドルまで上昇後、米長期金利の上昇により1.0893ドル付近まで反落した。ユーロ円は欧州時間の高値172.56円から171.58円まで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、トランプトレードによるドル買いと本邦通貨当局による円買い介入の可能性の鬩ぎ合いに警戒する展開が予想される。
トランプ前大統領銃撃事件を受けて、トランプ氏が11月の大統領選を制し、減税や関税引き上げを実施するとの見通しからトランプトレード(ドル買い・米国債売り)が活発化しつつある。
一方で、今月末に退任する神田財務官は、先週、日米金利差が縮小傾向にある中で過去1カ月間の急激な円安の進行は投機的と指摘し、輸入物価上昇により国民生活が脅かされるなら「由々しきこと」と懸念を示しており、円買い介入を実施したと思われる。
ドル売り・円買い介入が実施された水準は、4月29日の第1弾が159円台、第2弾が157円台、5月2日の早朝の第3弾が157円台、7月11日の第4弾が161円台だと推測されることで、神田財務官の防衛ゾーンは157円~161円にあると思われるため、本日も警戒しておきたい。
実需の1-6月期の円売りとしては、投資信託を通じた家計の円売り(新NISA少額投資非課税制度)が約6.1兆円、貿易赤字が約4兆円前後なので、約10兆円規模となる。
本邦通貨当局によるドル売り・円買い介入額は、4月29日と5月2日が9兆7885億円、7月11日が推定約3.5兆円なので、13.3兆円程度となる。
投機筋の円売り圧力は、7月9日時点のIMM通貨先物の非商業(投機)部門取組の円の売り持ちポジション(182,033枚)に示されているように過去最大規模となっており、神田財務官が円安の要因を投機的と指摘する根拠になっている。
先週金曜日の新聞報道では、本邦通貨当局が為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」をユーロ円で実施したことが関係者の話で分かった。
ドル売り・円買い介入に関しては、イエレン米財務長官が不快感を示しているため、ユーロ導入以来の高値圏に到達しているユーロ売り・円買い介入を実施することで、円安を抑制する意図なのかもしれない。