【市場の目】中国景気は一段と下振れも、当局に期待を抱くことは難しい
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト・西?M徹氏
中国景気は一段と下振れも、当局に期待を抱くことは難しい
金融政策はちぐはぐな対応、財政出動も小粒に留まり、過度な期待を抱くことは難しいのが実情
中国では3中全会が開催されたが、経済運営面では中国式現代化の推進とその実現に向けて国家安全を重視する方針が謳われた。こうした動きは足下で高まる欧米などとの対立を一段と深刻化させる可能性がある。他方、中国経済が直面する課題への認識は示されたが、具体性は乏しく総花的なものに留まる。なお、直後に中銀は短期流動性の拡大による景気下支えへ利下げに動くも、長期金利の高止まりを促すなどちぐはぐな対応を続ける。利下げの効果は限定的と見込まれ、景気の不透明感も払しょくできないであろう。
足下の企業マインドは製造業、非製造業ともに下振れするなど幅広い分野で頭打ちの動きを強める様子が確認できる。製造業では生産活動が頭打ちするとともに、受注動向も下振れしているほか、ディスインフレ圧力の高まりを示唆する動きがみられる。非製造業でもサービス業、建設業問わず下振れしている上、雇用調整圧力が強まるなど家計部門を取り巻く環境の悪化を通じて一段の景気下振れが懸念される。
4-6月は景気の頭打ちが確認されたが、足下では一段と下振れしている可能性が示唆される。金融市場では当局が何らかの景気下支えへの期待が高まると見込まれるが、3中全会の結果や当局の動きは対応の難しさを示唆している。中国経済に過度な期待を抱くことは難しく、世界経済も揺さぶられる展開が続こう。