東京為替見通し=ドル円、円高要因となった茂木幹事長の発言に要警戒か
23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は155.57円まで下落。自民党の茂木幹事長が22日の講演で「日銀は段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と日銀の利上げに言及し、日銀の金融政策正常化への思惑が高まった。ユーロドルはデギンドスECB副総裁が「9月は意思決定するには適した月である」と述べたことで1.0844ドルまで下落した。ユーロ円は、日銀の金融政策正常化への思惑やECBの追加利下げ観測を背景に168.84円まで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は30-31日の日米金融政策決定会合への警戒感から軟調な推移が予想される中、155円台までの円高の要因となったと思われる自民党の茂木幹事長の発言には警戒しておきたい。
日銀が昨日14時頃に発表した6月の基調的なインフレ率を捕捉するための指標は、3つのうち2つが前月より伸び率が拡大していたものの、2つは2%を下回ったままであることで、追加利上げの可能性を高める数字ではなかった。
しかしながら、次期総裁候補と見なされている河野デジタル相や茂木幹事長による日銀に対する利上げ要請発言を受けて、来週の日銀金融政策決定会合への警戒感が高まりつつある。
17日、河野デジタル相は、海外メディアとの英語のインタビューで、円の価値を高め、エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日本銀行に求めた。河野氏は、急激な円安がもたらす国内物価への影響などの問題を強調した。河野氏は円が安くなれば輸出の増加につながるが、多くの日本企業は海外に生産拠点を置いており、日本にとっての恩恵は限られていると述べた。そして「為替は日本にとって問題だ。円は安過ぎる。価値を戻す必要がある」と付け加えた。
ドル円は翌18日に155.38円まで下落し、一目均衡表・雲の下限155.49円を一時的に下抜けたものの、河野デジタル相が「日銀に対して利上げを直接求めているわけではない。金利が上がれば円高になるという理論を申し上げただけだ」と釈明したことで157円台に戻した。
22日の都内での講演で、茂木幹事長は、日銀について「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と語り、過度な円安の是正へ分かりやすい情報発信を求めた。ドル円は昨日155.57円まで下落し、一目均衡表・雲の下限155.87円を下抜けてNY市場を引けており、三役逆転の強い売りシグナルが点灯している。
ドル円の攻防の分岐点である155円割れは、日銀金融政策決定会合での国債の買入れ減額計画が「相応の規模」(植田日銀総裁)となり、さらに、追加利上げが決定された場合になると思われる。すなわち、相応の規模の減額と利上げというサプライズによって、投機筋の円売り持ちポジションの手仕舞いに繋がると思われる。
投機筋の円売り圧力は、7月16日時点のIMM通貨先物の非商業(投機)部門取組の円の売り持ちポジションは151072枚(×1250万円=約1.9兆円)までやや減少している。
また、日銀が公表する外国銀行在日支店の本支店勘定はキャリートレード残高を示唆しているが、4月時点で10.8兆円規模となっている。