あれから季節は幾めぐりもして、田の面いちめんの紫雲英の花も、緑肥にするのをやめたのでしょう、こぼれ種のわずかな花があぜに見られるだけになりました。弥生の晦がたで月も出ず、当時のおもかげは殆んど偲ぶべくもないのですが、蛙の声だけは、今も昔のままの賑やかさで宵闇のなかに響いています。
あれから季節は幾めぐりもして、田の面いちめんの紫雲英の花も、緑肥にするのをやめたのでしょう、こぼれ種のわずかな花があぜに見られるだけになりました。弥生の晦がたで月も出ず、当時のおもかげは殆んど偲ぶべくもないのですが、蛙の声だけは、今も昔のままの賑やかさで宵闇のなかに響いています。