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画面の隅々まで幸せな情感に
満たされた光り輝く表現
明るい陽光のなかで、あどけない表情を浮かべる少女。あるいは、柔らかい光のなかで、静かに読書する女性。これらのイメージには、ひとかけらの悩みもなく、画面の隅々まで幸せな情感に満たされています。このことが、ルノワールが多くの人々に愛され続ける理由ではないでしょうか。ルノワールが幸福感に満たされた絵を描いた背景には、楽しげな主題だけが楽しげな絵画を生み出すという確信があったからだといわれています。
今ではルノワールの描き出す光り輝く表現に、私たちは無条件に心地よさを感じますが、当時の美術界ではなかなか受け入れられず、厳しい評価にさらされました。私たちが親しんでいるルノワールのやさしい表現は、実は絵画における革命でもあったのです。
本展覧会では、ルノワールがその才能と絵画の革命を一気に花開かせたいわゆる『第1回印象派展』出品の代表作、《バレリーナ》(ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵)をはじめ、初期の印象派展の時代から、後期の無邪気にたわむれる明るい裸婦像まで、国内外の作品を展示し、ルノワールの魅力をあますところなくご紹介します。