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◎「疲労」という病名が招いた誤解・偏見
「慢性疲労症候群」は、米国疫病予防管理センター(CDC)が
組織した研究者グループが、疲労を主徴とした患者の集団発生の原因を
解明するために、調査対象症例を明確にするべく作成した基準において
用いられた病名です。(p801)。この誰もが自覚する「疲労」が
病名として採用されたことにより、多くのCFS患者さんが周囲の
人々により”怠け病”のような扱いをされ、誤解や偏見で苦しむこととなりました。
健康な人が激しい運動や長期間の作業時に感じる生理的な疲れは、
安静にしていると軽快します。一方、CFS患者さんが自覚されている
疲労感は、インフルエンザに罹患した時に自覚するような、いくら安静に
していても身体が重く沈み込むような倦怠感で、
しばしば筋肉や関節の痛み・違和感を伴っています。
しかし、この違いを周囲の人に理解してもらうことは難しく、
偏見や差別を受ける原因となっています。
ゆらりさんの著書のなかでもこの問題が紹介されていますし、
病名をCFSから変更してほしいとの要望が
世界中の患者会から出されました。そこで、日本でも2016年3月に、
日本医療研究開発機構ME/CFS研究班診断基準検討委員会において、
明確な病因が明らかになるまでは多くの学術論文で用いられている
「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」を正式病名として用いることが決められました。
また、軽度の運動や労作を行うだけで体調が極めて悪化することがこの病気の
特徴の一つであり、ME/CFSの診断基準項目としても取り上げられて
います。(P809)。しかし、会社は学校においてME/CFSという病気を理解
してもらえないことが多く、もっと身体を動かすように指導されたり、
安静にしてると元気そうに見えるため、じっとしていることに対して叱責を
受けたりしています。このようなME/CFSに対する無理解は、学校や会社だけでなく、
患者さんのご両親や兄弟にもしばしばみられ、患者さんはME/CFSという
病気に苦しむだけでなく、2重3重の苦しみを抱えておられるのです。