大阪府茨木市のサッポロビール工場跡地に、立命館大の「大阪いばらきキャンパス(OIC)」が開学した。文系の経営学部と政策科学部の学生ら約5500人が通学する。キャンパス内には地元の商工会議所が移転。学内商議所は全国でも異例だ。産学連携の「地ビール」開発もスタートした。同市では近年、東芝やパナソニックの工場が相次ぎ撤退。空洞化が懸念される中で、学生主導の地域づくりに期待がかかる。
■塀のないキャンパス
OICでは1日、新入生対象のオリエンテーションが行われ、約1100人が真新しいキャンパスに足を踏み入れた。
敷地面積は約11万平方メートル。地域との「つながり」をコンセプトに、塀を一切設けない開放的なつくり。政策科学部1年の古川佳歩さん(18)は「実地で福祉などのフィールドワークをするのが楽しみ」と声を弾ませた。
■経済効果期待
開学の経済効果も出始めた。JR茨木駅前で賃貸物件を扱う不動産会社によると、学生向けに市内に10棟近いワンルームマンションが新築され、「空きはほとんどありません」。家賃相場も千~2千円程度上がっているという。
学生らも茨木の街に溶け込もうと動き出した。大学近くの同駅や阪急茨木市駅周辺の商店街を学生目線で紹介するマップを作り、商店主らと協力して魅力を発信している。
商店街での食べ歩き動画をインターネットで配信している大学放送局の3年、渡辺康介さん(21)は「茨木には人情を感じさせる店が多い。その良さを知り、寄り道して帰りたくなるような街づくりに貢献していけたら」と話す。
大学近くの中条まちづくり商店会の田峰泰久会長(54)によると、学生サークルが商店街でカフェを運営する計画も持ち上がっている。「ここをマーケティングの実践の場にしてほしい」とチャレンジを歓迎している。
■地ビールを手に
経営を学ぶゼミ生らは大学の敷地がビール工場だったことにちなんで「地ビール」を開発し「iBR(アイビール)」と命名した。
苦みのある「レッド・エール」と、フルーティーな「ヴァイツェン」の2種で、兵庫・丹波篠山の麦酒醸造所に依頼し、学生らは商品ラベルなどにアイデアを出し合った。
酒販免許がないため直接販売はできないが、市内の酒店に卸してほしいと要望があるという。
市民や大学関係者を招いたアイビールのお披露目式は好評だった。キャンパスの近くを走る大阪モノレールが6月に行うイベントでも提供されることが決まったという。
開発に携わった同ゼミの4回生、絹野愛(めぐみ)さん(21)は「ビールをツールにいろんな人や企業とつながっていけるのが楽しい」と笑顔を見せた。