■「夫が構ってくれない」から…母親が持つ、息子への歪んだ支配願望
「ともすれば愛着とは、べったりとした繋がりを連想しますが、本来は、もっと健全な関わりを指します」
親子の健全な関係を築くには、親はあくまでも子にとっての「セキュリティーベース」となることが第一だ。子どもが外で不便に思う何かがあった際に、帰って来れる場であること。そして、これを親も子も自然に言葉にせずとも分かっていることがいい。
しかし、子どもが成長するにつれて、いつしか親離れ、子離れをするのが健全な親子関係であり、繋がりだ。そのため近親相姦的な「愛着」というのはあり得ないという。前出・桂田教授が語る。
「母親が息子を性的存在としてみるのはなぜか?同性である娘は自分と同一視できますが、異性である息子は同一視できないからです。だから、息子を性的存在として見てしまう母親がいるのです」
近親相姦とは、言うまでもなく虐待である。実際にそれを行わずとも、そうした意識を持つことは、子どもを「支配したい」という感情がそこにはあると、桂田教授はいう。
「子どもが自分から逃げていくのを嫌がる、引き留めたいという母親の意識があるのでしょう。本来、母親の持つ性的欲求は、当然ながら配偶者である夫に向けるべきものです。それが息子に向くということは、夫が構ってくれない、もしくはそれが望めない状況にあるからではないでしょうか」
さて、2014年9月に実施された日本家族計画協会による「第7回 男女の生活と意識に関する調査」によると、婚姻関係にある回答者のうちセックスレス状態にある夫婦は実に「44.6%」に上ることがわかった。
このセックスレスとは、日本性科学協会の定義によると「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意したセックスあるいはセクシャル・コンタクトが1カ月以上ない状態」を指す。
意外に知られていないが、キスやペッティング、裸でのベッドインといった「セクシャル・コンタクト」を行っていれば、これはセックスレスではないということだ。
夫が妻とのセックスを拒むのは、加齢による体力面での衰えに加え、仕事などのストレスといった要因が大きいようだ。また当然ながら、充実したセックスの前提には、夫婦が互いの存在を認められるような、良質な関係性が必要になる。
桂田教授やカウンセラーが指摘するように、子どもが育つにつれて、きちんと親離れ、子離れできなければ、健全な大人の男性になることはできない。しかし、度が過ぎた「ムスコン母」は、子どもが育つ(=自分の元から離れる)ことが、堪え難いのだ。そんな母親の元で育った青年の行く末は、単なる「マザコン男」では済まないだろう。実際に近親相姦をしないまでも、常に母親からのそんな“空気”を浴びながら育つ息子に、筆者は心底同情を覚えた。
そして、この問題は母親(妻)だけに責任があるのではない。父親(夫)もまた、妻を守るだけでなく、息子を守るためにも、家族をないがしろにしてはいけないのだ。
※本文中、カタカナ名は仮名です。
文/秋山謙一郎(フリージャーナリスト)
http://diamond.jp/articles/-/102766