テンプレ１８
■1/21発売 週刊文春2016/1/28号
夜更けのなわどび 林 真理子
SMAPが解散するかもしれないというので、世間は大騒ぎである。
なにしろ国民的スター。このニュースをNHKがトップで伝えたぐらいだ。
私は、もちろん彼らのファン。コンサートには何回も足を運んだ。
このあいだなんか名古屋にも行くという”追っかけ”をやったぐらいだ。
メンバーのうち二人とは対談もやらせていただいたし、”スマスマ”にも二回も出ちゃった。
ふつうのひとよりはちょっと素顔を知っているかもしれない。
初めて東京ドームのコンサートに行ってびっくりしたのは、彼らのプロ意識である。
四時間歌って踊って喋って、くたくたになっているはずなのに、その後にマスコミの人との懇談会に出るのである。
簡単な軽食とビールが用意され、その日招待されたスポーツ誌や週刊誌、
テレビ局の人なんかがわいわいやってる。その中をまわり、顔見知りを見つけると
「今日のコンサートはどうでしたか」
と真摯に尋ねるのである。
この何年か、吾郎ちゃんや香取クン、草彅クンらは舞台に進出していたが、それはかなりレベルの高いものであった。
あの三谷幸喜さんは香取クンのために書きおろしを書いたし、
昨年のPARCOでの香取クンと草彅クンとの二人芝居も素晴らしいものであった。
あの忙しい人たちが、どうしてあの長い長いセリフを憶えるヒマがあったのか驚くばかりだ。
つまり何を言いたいかというと、SMAPは大人が考えているような単なるアイドルではない。
バラけても舞台やテレビ、映画で主役を張れる人たちが五人いるのである。
SMAPがいなくなる日本なんて想像も出来ない。彼らが出ない紅白なんて考えなくもない。
いったいどうしてくれるんだー、と週刊誌に文句を言いたい。そお、この週刊文春にである。
昨年一月に、週刊文春はジャニーズ事務所副社長・メリー喜多川さんの独占インタビューを載せた。
ロングロングインタビュー。その中で週刊文春側は、メリーさんのカンにさわることをいろいろ言い、
巧みに挑発する。するとメリーさんは、お怒りの色を見せ、
「SMAPのマネージャーを、ここに呼んで頂戴」
と要求したのだ。
活字であれほど確執があらわになったら、マネージャーさんもいたたまれまい。
はっきりと力関係を知らしめることにもなった。彼女のプライドもずたずたである。
他の週刊誌によると、あの週刊文春の一件で、マネージャーさんは退社を決意したという。
私もおめにかかったことがあるが、聡明で気配りがすごい。デビューの時はパッとしなかったSMAPを、
これだけの大スターにしたのは、ひとえに彼女のプロデューサー能力にあると言われている。
賢い彼女は、バランスを取りながらフロント陣とうまくつき合ってきたのだ。
それをいっきに破壊したのが、あの週刊文春のインタビューだったのである。
ひどいじゃん、週刊文春。もしSMAPが解散となったら文春のせいだからね。