キックバックという名の「賄賂」で私腹を肥やす電通マン
キックバックもあると聞く。
藤沢 テレビ制作会社が、「うちだったら、数十万円程度のポケットマネーを落としますよ」という話を普通にしていた。暗黙の了解で懐に収める社員もいたようだ。
しかし、私は理解に苦しんだ。モラルに反する行為だからだ。
制作会社としては、電通社員と強いパイプを作ることで他の番組も発注してほしい。「キックバックしてあげるから、他の番組でも声を掛けてよ」ということ。つまり賄賂だ。
入社当時は、「利権をむさぼるようなことはやめよう」と、互いに絆を強めていた同期も、5年たつと朱に交われば赤くなるで、「電通はこうでなきゃ」と態度を一変させた。
悲しかった。
彼らは「必要悪」を言い訳にしていたが、結局は私腹を肥やしているに過ぎない。
また、電通の部長が架空取引で大金をだまし取った事件もあった。電通が関与していないイベントなのに、関与を装い、知人の広告会社からイベント制作の業務委託料約1億5000万円をペーパー会社に振り込ませた。
会社を利用する人が多いのか。
藤沢 入社時はそうではない。働いているうちに、みんな、上司の教えや周囲の環境に洗脳されていく。
私の入った部署は、新入社員は毎日、朝8時前には会社に行って、全員の机をぞうきん掛けする。帰りも、全員が帰るのを見届け、最後に消灯する役回りを担う。
「新入社員は派遣社員の下」という教えがあった。
飲み会では、先輩の革靴に注いだウイスキーやビールを混ぜ合わせたお酒を一気飲みさせられる、ということもあった。
私の同期が高級ブランドの白いシャツを着てくると、先輩が「よし、今夜は祝いだ」と言い、赤ワインをその真っ白なシャツにかけたことがあった。同期は一瞬、むかっとしたが、笑顔で「ありがとうございます」と。異常な縦社会が目の前にあった。