潘さんの職業は警察官だ。浙江省台州市に住み、地元の警察署で勤務している。２日午前８時ごろ、自家用車を運転して出勤のため署に向っていた。銭江晩報が報じた。
慣れた道だ。いつも通る椒江大橋に差しかかった。出勤ラッシュの時間で車量は多い。スピードを出して、前方の車を縫うように追い越す車もいる。
もちろん、警察官の潘さんがスピード違反をするわけにいかない。何台もの車に抜かれながらも、落ち着いて運転していた。
左側車線をトラックが追い抜いて行った。相当なスピードだ。道路工事用の加熱したアスファルトを満載している。
トラックは潘さんの車を追い抜いた直後、右ハンドルを切って潘さんの車の前に入ろうとした。そしてバランスを崩して大きく傾いた。
潘さんはトラックへの追突を避けようと右ハンドルを切ったため、車道右側のガードレールに突っ込んだ。大きく傾いたトラックは横転した。
荷台が潘さんの車の助手席部分にめりこんだ。フロントガラスが飛び散った。潘さんの車の車内に、大量のアスファルトが飛び込んできた。
目撃者によると、あまりにもひどい事故現場だった。トラックの荷台と積荷のアスファルトが乗用車の屋根を押しつぶしている。
熱せられたアスファルトから煙と独特の臭いが立ち上っている。「乗用車に乗っていた人は、助からないな」と思ったという。
通報を受けた消防が到着した。乗用車前部はアスファルトに覆われて、内部の状況が確認できない。
そこで手袋をつけた隊員が、運転席上部にあるアスファルトを掻きのけはじめた。
消防隊員は自動車の中に向かって声をかけた。すると、朦朧とした声だったが応答があった。「意識があるぞ！」――。
消防士は「頑張れ。助けてやるぞ」などと、声をかけつづけた。約１０分後に、アスファルトはおおむね取り除かれた。
次に、到着したクレーン車を使ってトラックを撤去した。さらに変形した自動車の一部を切断するなどで、潘さんを救出した。
潘さんよると、事故発生の瞬間にフロントガラスが砕け散ると同時に、アスファルトが車内に飛び込んできて、顔まで埋まってしまった。
アスファルトがどっしりと体にのしかかっていたが、変形した車体に足がはさまれ、身動きできなかった。
体の各部に、アスファルトの猛烈な熱さが伝わってきた。頭の中で何かが「パン！」とはじける音が聞こえたような気がした。
「もうだめだ。これは死んでしまう」と思った。「オレはまだ２５歳なのに」と思った。
続けて「まだ、結婚もしていない。いい目をみていないじゃないか」と思った。すると「そうだ、結婚もしていないし、わが子を抱いたこともない。
ここで死んでたまるものか！」という気持ちが湧いてきた。しかし、あまりにも苦しい状態が続き、くじけそうになった。
潘さんよると、しばらくして多くの人が「頑張れ！」、「大丈夫だから！」などと叫ぶのが聞こえて、力づけられた。
励ましの声はずっと続いた。もう、くじけることはなかった。最終的に助けられた時には、本当に感動したという。
潘さんの治療に当たる病院によると、潘さんは左脚を骨折し、腿から上の体の各所にやけどを負っているが、容体全体としては安定しており、生命の危険はないという。
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