「しかしなんでまたこのタイミングで?」
白み始めた東の空を眺めながら思った
樹海で自分の様子がおかしかったのは確かだが
あの窪地で見たゴミ(赤い布きれとか)の持ち主が憑いて来たなら
直後に来るはずだし もしやこの土地に何かあるのか?
そう思って「笹子 事故」で検索したらすぐに答えが出た
「こんなでかい事故があったのかよ・・・」
念の為地元出身の同僚に聞くと
「あーあの事故か地元じゃ有名だよ 笹子宿舎は元々国鉄の保線倉庫か
なんかの跡地で当時は死体安置所に使われたんだってさ なんか見たの?」
「・・・」
でもおかしい
その犠牲者なら引っ越し直後に出て来ていい筈だし何かが引っ掛かる
「そういや諏訪神社は行った? そういうの好きなら行って見れば?責任取らないけどw」
「どこそれ」
「甲斐大和の駅の終点方(甲府寄り)にあるよ まあよく調べてから行った方がいいな」
神社かぁ・・・ あ!
そう言えば引っ越しのときに大事な荷物開けるの忘れてた
急いで部屋に戻り梱包を解く
取り出したのは地元鹿島神宮の御札
毎年初詣の度に取り替えては目の届く所に吊るしてある
本来は神棚に納めるのが筋なのだが
「ヒキコモリの神様を引っ張り出すのに女神が裸相撲で気を引く」
なんて事する日本の神様達に丁寧過ぎる扱いもどうかと言う俺流の信仰スタイルで
夏は涼しく冬は暖かい所に飾って時々風呂上りのきれいな手で埃を払うと言う付き合い
参拝の時は
「まあ人気神社だし忙しいだろうから時間の空いてる時に適当にお願いしますわ」
と念じる始末だが幸いこれまで死にそうな事故を起こしても軽傷で済んでるから
ご利益はあるのだろう
「神さんすまん息苦しかったろ ココはちょっと寒いけど空気は綺麗だからくつろいで」
などとつぶやきながら西日の当たらない壁にぶら下げる
それからも時々黒い何かが廊下の隅や
部屋の窓に見え隠れする事はあっても引かれる事は無くなった
だがコイツは俺を引き込む機会を伺っていただけだと後から知る・・・
御札を眺めながら
「神さん来年の初詣は賽銭はずむからホント頼むよ」
「死んでもそうだけど働けない身体になったら賽銭も出せんから」
なんて言いながら平穏な日々を過ごしていた
黒い影も見えなくなって来て
「やっぱり軍神タケミカヅチさんはご利益あるなぁ」
などと感謝していたがそれも長くは続かなかった
中身を引き抜かれそうになってから半年くらい経ったある夜
笹子駅から500mほど東京寄りの場所で作業していた時の事
俺は見張員として現場に立っていた
下り線の作業で終電通過後23時前後から翌5時の始発までの作業なのだが
上り線に深夜2時半に夜行の貨物が通過する
その通過列車が接近したらサイレンを鳴らして作業員を待避させる仕事
200mくらいの区間を2班に分けて現場の両端と中間
それと東京方800m地点前方見張員の計4人の見張員が立つ
俺は1班と2班の間に立っていた
「1班は計8人・・・2班は計7人・・・ 列番88の貨物は2:14分通過か・・・」
メモを眺めながらなんとなく作業員の数を数える
昔やっていた海水浴場の監視員時代の癖でこういう時はつい人数を数えてしまう
1班は・・・あれ7人?
「1班中継どうぞ」
『はい どうした?』
「作業員1人いなくないですか?」
『あぁ小便だよ てかお前いちいち人数数えてんの?」
「ええまあ」
『そこまで気使わんでいいよ それより後20分で貨物来るぞ』
「はい了解」
でもなんかおかしい・・・ 2班は・・・
6・・・7・・・8・・・ 8人いるな
!!! 2班一人多いぞ?
「2班中継どうぞ」
『なんだよぉ』
「そっち何人います?」
『・・・7人だぞ なんで?』
「いやなんでもないです」
照明の逆光で顔が確認出来ないが何度数えても8人いる
あいつが紛れ込んでるのか?
御札は部屋に置いたままだしそれに付け込んで現場にまで来るのかよあの野郎!
恐怖より怒りが先に立ったが影が見えるだけでその夜は何事も無かった
そしてその3ヶ月後に俺は殺されそうになった
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