技術の発展に伴い、我々の生活環境は大きく変化した。しかし、生活が豊かになった反面、新たな問題も浮上している。
その中でも、本稿では、昨今話題になっている「昇りエスカレーターでの放屁」について言及する。エスカレーターとは、乗る人の意思とは無関係に進む「動く階段」とも言える革新的な装置であるが、人間の本質的な欲求である放屁をめぐって社会的な問題が生じている。
以下では、昇りエスカレーターに乗っている際、後ろに人がいるにもかかわらず放屁することの是非についての見解を述べた。考察を進める中で我々は、必ずしも屁を我慢する必要はないという結論に達し、また、以下の議論では当該行為による被害を抑える方法についても言及した。
本稿では、屁とは尻から噴出するガスのことを指し、放屁とは意思の有無に関わらず屁を放出することを指す。
通常、我々人間は他種の生物と違って意思を持っており、羞恥心や自分のいる環境・状況等を鑑みて放屁するか否かを判断し、ある程度は放屁を制御することができる。
一見、昇りエスカレーターで後ろに人がいるという状況下で放屁することは人道に反し、非難されるべき行為である。なぜなら屁とは自身の背面方向に噴出されるものであり、またエスカレーターは乗っている人の意思に反して前に進むため、後ろの人には放たれた屁を回避する手段がないからである。事前に「今から放屁します」と宣言することで後ろの人に回避を促すこともできるが、言われた本人は「宣言するくらいなら我慢してほしい」と思うはずである。思わぬトラブルに発展しかねず、また、宣言したところで実際にいつ放屁するかは結局自分のタイミングであるため、後ろの人が回避するのは困難であろう。
このように、昇りエスカレーターで放屁することは後ろの人にとってタイミングを把握しづらく、非常に迷惑な行為となりうる。現代社会を生きる者にとって見ず知らずの他者に迷惑をかけることは苦痛であり、それが自身の放屁によるものとなれば、羞恥心も相まって自己嫌悪感は割増しとなる。昇りエスカレーターでの放屁によって幸せになる人などおらず、社会全体の幸福度を考えれば明らかにマイナスである。
以上のことを踏まえれば、周囲のためにも、また自身のメンタルヘルスのためにも、昇りエスカレーターでは放屁するべきでない。放屁を我慢することは身体にとって良くないことであるが、エスカレーターに乗っているのは一般的に数十秒程であり、その程度の我慢が健康に悪い影響を及ぼすという研究結果は現在のところ報告されていない。
しかし、時に人は「どうしても放屁を我慢することができない」という状況に追い込まれる。腹の具合が悪い場合、スマホなどを見ていて吹き出しそうになった瞬間などその最たるものだろう。そのような時でも人は放屁を我慢しなければならないのだろうか。
ここで「我慢しなければならない」と判断するのは早計である。以下にその根拠を示す。
考慮に入れるべきは屁とエスカレータの速度である。
一般人が尻から屁を放出する時の速度は3km/sと言われている。時速に換算すれば12km/hであり、これはジョギングの速度とほとんど等しい。一方、エスカレーターの速度は規格が定められており、0.5km/s～0.8km/s(30m/分～50m/分)で、徒歩よりも遅い。つまり、屁の方がエスカレーターよりも速いのである。
このことから、本稿で推奨する昇りエスカレーターでの放屁方法は、放屁時に尻をエスカレーターの進行方向に向ける(つまり後ろを振り返る)ことである。このことによっ