泥棒「……」ゴソゴソ 男「……だれかいるのか?」 ID:DP7kwTAt

1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/04/15(水) 10:55:56.13 ID:DP7kwTAt

泥棒「!」

男「……だれか……いるのか?」スタスタ

泥棒 (や、ヤバイっ……見つかるっ!?)サッ

男「……なぁ」ガチャッ


泥棒 (……こ、こうなったら!)チャキッ

ガチャッ

泥棒「う、動くなっ!」チャキリッ

男「……」スッ

泥棒「動いたら……さ、刺すぞっ!」スッ

男「……してくれ」

泥棒「……え?」

男「……刺してくれよぉっ!いっその事!!」

3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/04/15(水) 11:00:18.67 ID:DP7kwTAt

泥棒 (な、なにいってるんだコイツ……)

泥棒「ほ、本気だぞっ、本気で刺すぞっ!」スッ

男「……ついこの前」

泥棒「……あん?」

男「ほんの一週間前。……娘が死んだんだ」

泥棒「……えっ?」

男「……まだ七歳だった。妻は三年前に先立って。これから俺が守ってやらないとって決めたのに……」

泥棒「……ど、どうして?」

男「……幼稚園の送り迎えの途中。トラックが俺の車に突っ込んだ……」

男「……娘の忘れ物を、取りに行ってる間に……ほんの数分の間だった……」

4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/04/15(水) 11:04:37.42 ID:DP7kwTAt

泥棒「……そりゃ……お気の毒……にな……」タジタジ

男「……泥棒さんよ」

泥棒「……?」

男「なーんにも無かっただろ。この家」

泥棒「え?……ま、まぁ……酒瓶とその他小物が少々……か」

男「いいよ。くれてやるよ。……どうせ明日捨てるつもりだったんだ」

泥棒「……」

男「……ごめんな。身の回りの整理してる時に人にあったもんだから、つい話し込んじまった」

男「もちろん通報なんてしないから安心してくれ。……あ、金もあるぞ。持ってくか?」スッ


泥棒「……あんたは、明日死ぬつもりか?」

5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/04/15(水) 11:08:56.30 ID:DP7kwTAt

男「そうしようかと思ってる。もっとも、あんたが刺してくれるなら別だがね」

泥棒「……俺は殺し屋じゃない」

男「……すまん」

泥棒「へ、泥棒にあやまる奴なんか居ないぜ」スッ

泥棒「……なぁ。あんたの気持ちは変わらないかも知んないけどよ」

泥棒「あんたや、あんたの娘のさんの話をもっと聞かせてくれないか?……明日までで良い」

トクトクトク

泥棒「旅立つ前に、せめて一献だけでもよ」スッ

男「……」スッ

泥棒「……つっても、あんたの酒だけどな!」ニカッ

6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2015/04/15(水) 11:15:11.40 ID:DP7kwTAt

男「……馬鹿野郎。泥棒と酒なんて飲めるかよ……」

男「……」

泥棒「……だよな。すまねぇ……じゃあ、俺は」

男「だけど……死ぬ前にアンタみたいな人との見交わしたい……」ボロッ

泥棒「……」

泥棒「……へっ」ニカッ

泥棒「……よしっ!そうと決まったら呑むぜぇー!なぁっ!?」ガシッ

男「……」コクリッ


その日、久しぶりに暖かさに触れた気がした。
泥棒は良い呑みっぷりで、次第に気分も晴れていった。
そのあと二人で目茶苦茶セックスした。
娘と妻の事はなんとなくどうでも良い感じになった。
俺は明日から、コイツ(泥棒)と生きていくんだから。
まったく、何にもない筈の俺の家からとんでもないものを盗まれちまったぜ。

でも、これからよろしくな。急転直下に出会った、運命の恋泥棒さん。



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