801サロン@チラシの裏避難所 2104枚目 #304

304名無しさん@Next2ch:2020/12/26(土) 18:02:37.50 ID:???

老紳士「朝、日課の散歩に出掛けると私の後ろを付いてくる犬がいた。さして体格の良くない犬だ。果たして雑種であろう。
凛と冷たい空気の中をいつものように歩幅を大きく歩く私を、彼――オスなのであった――はその短い足でどこまでもどこまでも追ってきた。ひとり暮らす、家の前までも。
元来犬好きの私はさすがに情が湧き、しかしてなにも言わず彼の顔をじっと見つめた。先の垂れた耳がぷるぷると揺れていた。彼もまた黙ったまま私を見つめ、幾ばくかののちに尻を向け、立ち去った。
そんなことがそれから二週間、毎日続いた。私の子供時分には市中に狂犬病が残っていたが、この令和の世だ。障りはなかろうと彼の鼻に向けて手の甲を差し出した。
彼はふんふんと鼻を鳴らし、私を嗅いだ。許しに従い、私は彼の頬を手のひらで包んだ。
私はその犬の名を、リーと付けた」

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