>>42
短くまとめるのは大変だぁ…
和馬というのは父の親友が付けた名前らしい。生まれてはじめてのプレゼントだのなんだの言うやつも多いが、勝手に付けておいて贈答気取りとはいい迷惑だ。
父は俺が産まれる前に死んだ。それからは、その自称親友が父親代わりだった。そいつによると、俺は父に瓜二つらしい。嬉しそうに、懐かしそうに、――辛そうに笑うが、こちらとしては一度も会ったことのない人間と似ていると言われても困る。
ある日、そいつが俺を「和也」と呼び間違えたことがあった。和也は父の名だ。あっという顔をして気まずそうに謝っていたが、俺は無性に腹が立った。それから、父に似ている自分が嫌になった。
父は短髪だったので、髪を伸ばした。父は野球をやっていたので、俺はやめた。父は豚の生姜焼きが好物だったので、俺は食べなくなった。
やめていくたびに、あいつは悲しそうな顔をした。その顔を見ていると、胸がすく思いだった。でも、それだけだった。あいつが「和也」と異なる俺のことを好きになることはなかった。これからも好きになることはないだろう。でも俺はやめるのをやめられない。その理由はあいつの悲しい顔を見るたびに膨らんでいく。これは、この感情は――。
――いや、やめておこう。俺たちの知らないところで育っていく感情に勝手に名前を付けるなんて、きっといい迷惑だろうから。