大阪市営の公園で昨年夏、4歳の女児が人工池の噴水で遊んでいたところ、勢いよく出た水が陰部にあたり、重傷を負いました。噴水にどんな危険が潜んでいるのでしょうか。
大阪府内に住む女児の父親(38)によると、女児は昨年6月、大阪市西区の靱(うつぼ)公園内にある人工池(深さ約20センチ)で父親とともに遊んでいた。
池には、数十秒間隔で水柱を作る噴水があった。女児はパンツ姿で、水中にある噴き出し口をまたぐようにしてしゃがんだ。その直後、水が噴出。女児は「痛い!」と叫び、股を閉じて泣き始めた。パンツが血で赤く染まっていた。
父親と近くにいた母親は女児を連れてタクシーで近くの病院へ。この病院では止血できず、別の病院へ救急搬送された。女児は止血手術を受け、4日間入院した。
手術をした病院によると、パンツはやぶけておらず、傷は体の表面ではなく陰部の中だった。体内から小石などの異物も見つからなかったことから、水流による傷と判断。
この病院の小児科医(33)は「水圧や水の角度、噴き出し口との距離などいろいろな条件が重なったことによるけがと思われる」と話した。父親は「水でけがをするとは思わなかった」。
靱公園を管理する大阪市の大阪城公園事務所によると、池は立ち入り禁止で、貼り紙で「危険です 入らないでください」と注意を促していた。
しかし、子どもでも容易に入ることができ、子連れでよく靱公園を訪れる女性(39)は「暑い日は10人以上の幼児が池で遊んでいる。手や足で噴水の噴き出し口を塞ごうとする子たちを見たことがある」と話す。
ログイン前の続き日本小児科学会(東京都)のこどもの生活環境改善委員会によると、水流による陰部のけがは報告例が少ないが、2013年8月、6歳の女児がプール施設のジェット水流によって陰部から出血した事例がある。
噴水の場合は、子どもは興味本位で噴き出し口をのぞき込むことがある。水圧が強ければ、目や口にけがを負う可能性もあるという。
子どもの事故予防に詳しい小児科医の山中龍宏さん(69)は、「保護者がこうしたけがが起こりうると知ることは大事。だが注意するだけでは事故は防げない」と話す。
噴水の管理者側が水圧が強い噴水には柵を設けるなどして、近寄れないようにすることや、水圧を低くすることも必要と指摘する。
今回の場合、現場の公園から救急搬送されておらず、保護者から申し出もなかったことから、大阪市は女児のけがを把握していなかった。
事故当時、水柱は水面から高さ約180センチまで噴き出す設定だったが、記者の取材で事故を知り、今年4月19日から、水柱の高さが約160センチになるように水圧を下げたという。
一方で、市の担当者は「景観も考慮すると、現時点で池を高い柵で囲うことは難しい」と悩む。
国土交通省によると、靱公園などの都市公園にある噴水について、水圧に関する国の安全基準はない。
また、噴水メーカーなど20社でつくる日本水景協会(東京都)が作る実用的指針では、防護柵や警告表示などの安全対策について「十分な検討を行うこと」としているが、水圧の数値には具体的な決まりがないという。
山中医師は「女児がけがをしたような噴水は全国で他にもあるはず。業界団体にも危機意識を強めてもらうことが大切だ」と指摘する。