パを吹っ切れない、優柔不断ブサイク投下しやす
『………今、何時だろ?………』
近くに時計はあるんだけど、時間を確認する気力も湧かない。
久々に取れた連休だというのに、何してるんだろ、俺……
カーテンを閉めて薄暗くして、エアコンで快適な温度を保った部屋。
俺はそこに閉じ籠もって、何をするでもなくただ身体を横たえて、鬱々と無駄に時間を過ごしていた。
ここ数ヵ月、ずっと忙しかった。ひたすら仕事に打ち込んで、忙しい時は何も考えなくて済んだのに……
何もしないでボンヤリしていると、もう思い出したくない数々の出来事が頭に浮かんでくる。
恋は遠い日の花火ではない―――って、誰が言ってたんだっけ?何かのCM?
そんなフレーズと共に、無防備でちょっと歪んだ下手くそな笑顔とか、俺の名前を呼ぶ舌っ足らずな声とか、触れ合った時の心地良い感触とか、
あいつが俺に残していった思い出が、次から次へと記憶の中から呼び覚まされる。
捨ててしまおうと思った汚い貝殻。俺はそれをベッドの脇のサイドボードの上に置いたまま動かす事もできずに、
薄暗い部屋でそれが視界に入る度にボンヤリと眺めては目を逸らしを繰返し続けている。
あいつはろくでなしだ。他人の物を盗んでいた。そして警察に捕まった。当然だ。悪い事をしていたんだから。
ずっと前から俺の事もみんなの事も騙してた。いや、騙してるつもりはなかったのかもしれないけど。
でも、俺と出逢う前から、出逢った後も、ずっとずっと何年も何年も、あいつは悪い事をやめなかった。
あいつは、バカで、嘘つきで、俺の信頼を裏切り続けていた――でも、でも、
「――でも、好き、なんだよなぁ~~~……」
俺はひとりぼっちの部屋で布団にくるまってゴロゴロと転がりながら呻く様に口に出してそう言っていた。
自分でもビックリした。
「すき、だ……好きだ、好き……」
まだあんな奴の事を……自分で自分が情けなくなってくる。涙が出そうだ。
けど、あいつに泣かされるなんて腹立たしいからグッと堪えた。
ダメな俺。情けない俺。でも、何もできない。したくない。俺は裏切られた。忘れたい。忘れてしまいたい。でも忘れられない。
俺はあいつから逃げられない―――
絶望感に苛まれながら布団の中で丸くなって時間を遣り過ごしていたら、腹が空いてきた。何をしてた訳でもないのに。
のそのそと起き上がって部屋の中に食べる物がないか探したけど何もなかった。
「………外いこ。」
顔を洗って身なりを少しだけ整えて数日ぶりに玄関のドアを開けた。空気の澱んだ部屋から一歩足を踏み出したらまだ外は明るかった。
続く。