ある年ある日の楽屋。
雑誌を読んでいたパが、ページをめくりながらそのまま、
「ねー、キスしてよ」
とブに言う。ブは驚いて振り返る。
「え? なに?」
「おでにキスして」
「こんなとこで何言ってんだよ」
「今、おでたちしかいないし」
「あのなー」
「じゃ、いいよ。お前がしてくれないならもう、別に誰か」
「……別にって」
パ、雑誌をパラパラめくり続けている。
「誰かって何?」
「……知らない」
「お前、他の人と、なんか変なことしてんの?」
「……」
ブ、パに近づいてパの顔を覗き込む。
パはまだパラパラパラパラ雑誌をめくったまま無言。
ブがパのその手を止める。見つめ合うふたり。
ブがパの肩に手をかけキスする。
「……お前さ、他の人とこんなこと、すんなよ」
「……じゃー、もっとして」
そう言われたものの、ブ、楽屋なので躊躇している。
パ、雑誌を机の上に置き、ブに抱きついてブの上半身を引き寄せ、耳元でささやく。
「他の誰ともする気ないから……こーいうのは、世界で一番好きな人としかしちゃいけないことだから」
ぎゅっとブを抱きしめて、髪の毛をくしゃくしゃ撫で回す。
「ちょっと、また髪の毛セットし直さなくちゃ」
「いーじゃん、たまには乱れてても。……大好き。ずっと」
「……俺も」
ブの照れたようなその答えを聞くと、パも赤くなる。
それを誤魔化すようにブをもっと強く抱きしめ直して耳たぶを舐める。
「……や、くすぐったい」
そう言うブの唇に、パから深いキスをした。
他に誰か入ってくるかもしれないけれど、今はふたりきりの楽屋でずっと抱き合っている。
おわり。