―― 近年、BLものが女性を中心に人気ですが、田亀さんから見てBLはどういった印象ですか?
田亀 わたしはBL黎明(れいめい)以前の、耽美、やおいのころからそういった作品に触れていまして、高校時代に初めて描いた漫画は『JUNE(ジュネ)』(編注:男性同性愛を描いた女性向け作品が中心の雑誌)に投稿しています。初めて載ったのもJUNEでしたし、女性向けの男性同性愛ジャンルというのは商業では知ってはいます。
いまのBLの違いというところでお話すると、耽美のころは、美しくなくてはいけないという鉄則があったので、それが逆に一種のゲイ差別的な文脈に繋がっていった印象があります。一例を挙げると、「JUNE」のキャッチコピー「いま、危険な愛に目覚めて」。男性同性愛ものを“危険な愛”って表現しているんですけど、当事者側としては「うーん」って感じでした。そういうわけで、昔のBLの元祖といったものはもちろん面白いものや良いものもある反面、どうしても無自覚な差別というものがあった気がします。
それがBLになって、あっけらかんと少女漫画の延長みたいな感じで男の子同士の恋愛、セックスが描かれるようになって、そうするといま言ったような“危険な愛”というような言葉も出てこなくなったので、気楽に楽しめるようになったと思います。