もう想像力ぶん回したものならなんでもただただメモれ #9

9名無しさん@Next2ch:2018/11/25(日) 01:28:39.27 ID:h3eY7wod

腐敗していく。当たり前の感覚が黴と蛆に溶かされていく。自然界の掟じゃないか──生きる事を取り止めたら、勝手に循環されていくんだ。

生きながら腐っていくことにした。脳だけは生かし続けた。後は目か。終わり行く自分を見届けてたかったから。
孤独死の現場にでもなりそうだな。上手くいったところで、自己満像するだけでやっぱり孤独死の現場になる。


母屋(おもや)の一室。もう財政破綻して檀家の途絶えたお寺には、寂れだけがあった。
小さな仏堂がある。都内の大寺から依頼されたも、書きかけのまま塔婆(とうば)。幾つも幾つも書き終えられずに、中途半端になっている。
そのまま二週間連絡不通でいる。一度だけどこかの誰かのお弟子さんと思しき輩の訪問があった。
そんな気配を悟って、物置き部屋にそそくさと隠れ、うずくまっていた。久し振り過ぎて扉もがたがただし、踏み入れると埃が舞いあがり、無数のダニはそんな塵にしがみついて無重力を体験する。
床にはやっぱり埃一面の新景色だった。うずくまったまま、埃景色に跡を残して這い、汚れた壁に腰を掛けた。はぁ、っはあ。はあっ、ぁっはあ。はあ、はぁ──っ。
これだけのことで、物凄く疲れた。現実の隅っこから隅っこまで走り尽くしたと思ったし、今の僕には実際その感覚で合っているとも思う。

浅い呼吸を繰り返すたびに、埃とダニのワンダーランドを喉にへばりつかす。黴とか菌とかがさらに世界観を増幅させる。口いっぱいに広がる赤いセカイには新しい物語が始まるのだろう。終わりの際まで行き着いた僕とは違って、そこは希望に満ちているのだろう。
歯肉という基礎がほのかに腫れてきた歯々の間には、虫歯菌と自然菌とがはじめての出逢いをしているだろう。ダニはそれをほろほろと慌ただしく見ていることしかできない。唾液でもう溶かされそうだからだ。
扁桃には喉の奥へと行ってはいけないと引き留められた者たちがあてもなくうろついている。
難民キャンプのようなものだ。しかしここで再開を果たしたダニの家族もあったりする。一族が結集したりもした。群れはひとつの匂い玉となる。
そんな感じで肺とか胃とかにもそれぞれのコミュニティが形成される。
そして、上手いこと脳まで辿り着いた菌がいる。侵蝕と死の菌。しかし菌は失敗した。叶わなかったんだ。宿主の終わり行く頽廃への希求。醜い思想の濁流に飲まれて菌は死滅した。

(想像というより、多分事実なんだと思う)、そう思って、一際深い深呼吸をして、カラダのなかのコミュニティを発展させる。そうしてから、物置き小屋を見渡す。

茶ばんだ半透明のカーテンの端では採光がされていて、そんなわずかな窓辺に

りんごがあった。



そう言えば半年前ほどに食べ忘れたりんごがあったような気がする。私財整理の休憩で食べようとしてたのに、こんなところに置き忘れたのか。
りんごは黴の白を帯びて、頽廃の色合いもあったけど、それでもほんのすこし赤かった。強い果実だと思った。
確かスーパーマーケットで購入した海外輸入品だった。農薬が強めだったのかな。
強めの薬とかそういう膜で覆うことができれば、僕も社会を逞しく生きぬくことが出来たのかな。
立ちあがった。ひたひたと歩み寄り、掴んだ。ぐじゅりと空虚をなぞる感触が指先にきた。ただ手には液体がこびりついた。噛み癖でぼろぼろな爪の間についたものをべろりと舐めた。吐いた。僕の内側の赤いセカイが再放出され、死の容易さを思い知ったコミュニティでは思想体系が見直されようとしている。

なんだ、結


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