丸谷才一 Maruya 『女ざかり』 (文春文庫)  DVD 吉永小百合, 津川雅彦,  大林宣彦 (監督)   風間杜夫, 藤谷美紀, 三國連太郎 「あなたのシワが撮りたい #6

6 長編小説で読んだのは『たった一人の反乱』と『輝く日の宮』のみ。:2019/04/23(火) 04:55:02.00 ID:???

 長編小説で読んだのは『たった一人の反乱』と『輝く日の宮』のみ。この2作、一言で云って、感心はしたが感動はしなかった。

 先日或る古本市で『女ざかり』見かけ、格安だったせいもあって購入、久しぶりに氏の本を読んだ。とても愉しかった。日本文化に対する深い考察をけっして堅苦しくなることなくユーモアたっぷりに語る。しかも文章がしっかりしている。

 が、やはり、感心はしたが感動はしなかった。氏は常々「日本にはあまり存在しない “ 大人のための文学 ” を書くことを目指している、と云う趣旨のことを述べていたように記憶するが、もし知的興味は誘うが感動は与えないのが「大人の文学」だとするのなら、「大人の文学」は芸術とは呼べないのではあるまいか、と私は考えていた。

文学であれ、音楽であれ、美術であれ、芸術は、一言で云ってしまえば、まず感動を与えるもの――或いは考え込ませるもの――であると思うからだ。(そうあってほしいと願っているだけかもしれませんが。)

 『女ざかり』に登場するのは、ほぼ全員、人生の根元的悩み――経済的悩み、己の容姿に対する悩み、自分の存在価値に対する悩み等――とはほとんど無縁の、知的上流階級の人間である。センスの良い服を着て、美食を愉しみ、不倫を含む恋愛も肉体の問題と云うのではなく知性の問題として愉しんでいる。従って、読者の魂を揺さぶることは皆無である。(もちろん私だけの感想かもしれません。)

 『女ざかり』は知的エッセイとして読むべきだろう。ここには、文体論、太平洋戦争論、経済の交換理論(日本文化における贈与の意味)、憲法廃止論、妊娠中絶の可否、等々、知的興奮を誘う様々な話題が提出されていて、この本を読んだ後では、きっと、それらをあたかも自分自身の知識・論理として誰彼に話してみたくなるだろう。そして、きっとみんなから、特に女性から、何て豊かな知識の持ち主だろうと褒めそやされることだろう。


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