> 鈴木敏夫:本当はさっきの話で、高畑さんが主人公の少年を鍛えるっていうシーンがね、映画の主たるテーマだったはずなんです。
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> 石田留美子:ああ、じゃあ話、もっと多かったんですね。二人のふれあいシーンが。
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> 鈴木敏夫:で、亡くなっちゃったでしょ。そしたら突然ね、宮崎駿ってショックを受けて。
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> 石田留美子:はい。
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> 鈴木敏夫:それでね、絵コンテっていうんですけど。制作がね、途中で動かなくなっちゃったんですよ。で、なんでかって言ったら、ショックなんですよ。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:で、とにかく高畑さんを描くために、今回の映画やろうとしたでしょ。ところが、当の本人がいなくなっちゃったでしょ。
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> 石田留美子:はい。
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> 鈴木敏夫:で、何もやらなくなっちゃったから。僕、途中でね、「宮さん、これみんな待ってるんでね。ちゃんとやらないと、映画できないですよ」って。
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> 石田留美子:はい。
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> 鈴木敏夫:そしたら、言い出すわけですよ。「いや、高畑さん死んじゃったし…」って。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:「え?なんですか?」って言ったら、「やる気なくした」って言うんですよね。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:むちゃくちゃなんですよ。
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> 石田留美子:うん(笑)
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> 鈴木敏夫:それで、呆然。ほぼ半年ぐらい。1年ぐらいかな、そのストーリー作りがね、ストップしちゃったの。
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> 石田留美子:ああ、1年ぐらいそうなんですね。
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> 鈴木敏夫:それで本来、自分と高畑さんの関係を描く予定が、どっかへ吹っ飛んじゃったんですよね。
>
> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:僕は何回も催促したんですよ。「まぁ、死んじゃったかもしれないけど、宮さんね、最初にやろうとしたことは貫いたらいいんじゃないか」って。
>
> 石田留美子:はい。
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> 鈴木敏夫:そしたらね、「だって、死んじゃったからもう描けないよ」って言うんですよ。で、1年ぐらい経ったでしょ。それで気がついたらね、青サギ(鈴木敏夫)とね、少年(宮崎駿)の話に変わっちゃったんですよ(笑)
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> 石田留美子:ああ。
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> 鈴木敏夫:それで僕は、ちょっと複雑だったんです。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:やっぱり高畑さんのことをどうすんのかなって。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:それでその途中で、大伯父出てきて、途中からいなくなっちゃうんですよね、あの映画。
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> 石田留美子:うん。
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> 鈴木敏夫:それが理由なんですよ。皆さんの中にはね、不思議に思われた方いらっしゃるかもしれない。
>
> 石田留美子:はい。