女子高生 籠の鳥事件
【半年間の同棲】
「ねえ、私、逃げないから手錠や目隠しをとってください。あなたは優しい人なんでしょ」
誘拐の翌日、A子さんはそう話しかけ、Sは言われるがままにした。優しい言葉をかけられたこともあるが、手錠をつけたままだと扱いづらいということもあった。
さらにA子さんが喜びそうな雑誌を買ってきて、機嫌をとった。
「ねえ、あなた、私のこと好きなの」
とA子さんが尋ねると、
「好きだから、お前をああしてここに連れて来たのじゃないか」
とSは怒ったように言った。
A子さんからすれば、この中年男が可哀想な人に思えた。あんなことをしなければ、女1人ものにできないのか。そういう思いが母性本能をくすぐった。「怖い」という思いは次第になくなっていった。
4日目、Sは1人大丸に出かけて、少女のための下着類、ワンピース、オーバーなどを買ってきた。他にもミシンや布地なども買い与えている。A子さんは年頃の少女らしく新しい服を着て喜んだ。
Sの犯行は最初こそ強引だったが、それからはずっと少女を大切に扱っていた。もう淋しい思いを綴った日記をつける必要もなくなっていた。