2月13日深夜、宮城、福島両県で最大震度6強を観測する東日本大震災の余震が発生したのは記憶に新しい。これを機に、菅義偉首相が昨秋の就任以来、首相公邸に入居せず、近くの議員宿舎から通勤を続けていることの是非が議論になった。
野党は、国会で「危機管理上、問題がある」と主張して公邸住まいを求めたが、首相はかたくなに応じず。「『短命政権のジンクス』を気にしているのか」「“幽霊”が怖いのかも」…。その理由を巡り、永田町では揣摩臆測(しまおくそく)が飛び交っている。
(中略)
ここからは推理の世界である。
首相側近や周辺は、激務の疲れを癒やすためにも「公邸よりも、慣れ親しんだ赤坂宿舎で寝たいのだろう」と体調管理面の理由に重きを置く。「表舞台に出るのを嫌う夫人に配慮している」とみる関係者もいる。実際に官房長官時代、官邸と同じ敷地にある長官公邸に入居しなかったのも、夫人が難色を示したからだとされる。
また、「公邸に入居すると短命政権になる」とのジンクスを嫌ったとの見方もある。確かに途中入居だった小泉氏以外、公邸に入った6人の歴代首相は総じて1年前後で退陣に追い込まれている。逆に、入居しなかった第2次政権の安倍前首相は、憲政史上最長の政権を築いた事実がある。
極め付きは、都市伝説となっている“幽霊”を挙げる説だ。現公邸、つまり旧官邸は、1932年の五・一五事件で犬養毅首相が、36年の二・二六事件では岡田啓介首相の義弟が殺害された歴史上の舞台、現場となった。
旧民主党の加賀谷健参院議員(故人)は第2次安倍政権時の2013年、こんな質問主意書を提出している。「旧官邸である公邸には、二・二六事件などの幽霊が出るとのうわさがあるが、それは事実か。安倍総理が引っ越さないのはそのためか-」。政府が閣議決定した答弁書の内容は「承知していない」だった。
実は、菅首相は当時の官房長官として記者会見でこの点を質問され、「いろんなうわさがあることは事実だし、この間、閣僚が公邸で懇談会を開いたときもそういう話題が出たことも事実だ」と答えている。記者が「長官も公邸は何度か入ったと思うが、(幽霊の)気配はあるか」と畳み掛けると、「言われればそうかな、と思う」と冗談めかしてけむに巻いたのだった。
謎解きの答えは結局、口数が少なく容易に真意を悟らせないことから「鉄壁のガースー」の異名を持つ首相の胸の奥にしまい込まれている。
日本の中枢、都心の一等地。そこだけ時間が止まってしまったかのような緑深い木立に守られ、ひっそりと立つ最高権力者の館、首相公邸-。主は当分、住みそうにない。
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