福井県の西川一誠知事が関西電力高浜原発3、4号機(同県高浜町)の再稼働に同意した。
高浜町長や県議会の同意に加え、求めてきた立地地域の経済・雇用対策や原発への国民理解の促進で国の姿勢が確認できたためのようだ。しかし、隣接する滋賀県の三日月大造知事が「再稼働を容認できる環境にはない」と指摘するように、周辺自治体を含め理解が広がっているとはいえない。
福井地裁は4月、高浜原発3、4号機について、原子力規制委員会の新規制基準が緩すぎるとして、運転を差し止める仮処分を決定した。関電の異議申し立てに対し、同地裁が24日に出す結論を待たずに同意表明したことも疑問だ。
政府は福井地裁の仮処分決定後も、規制委の審査をクリアした原発は再稼働させる方針を堅持してきた。8月から九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が順次再稼働し、10月には四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について知事が同意した。原発立地自治体の知事の同意は福井で3例目となった。関電は福井地裁が決定を覆した場合、すぐに3号機の燃料装?(そうてん)を始め、来年1月下旬に再稼働させる方針だ。
高浜原発は避難計画の策定が義務付けられる半径30キロ圏に、福井県以外に京都府と滋賀県が入り、とくに京都の圏内には約12万5千人と福井より多くの住民がいる点で川内、伊方両原発と大きく事情が異なる。京都府は原発立地道県以外では全国で唯一、事故時に即時避難が必要な5キロ圏にも一部が含まれる。
にもかかわらず、関電は福井県と高浜町のみの同意で再稼働に踏み切る構えだ。京都府と滋賀県は立地自治体並みの同意権を求めてきたが、関電と締結、合意した高浜原発に関する安全協定に同意権は盛り込まれていない。過酷事故で重大な影響を受け、住民避難で責任を負う地域の声を置き去りにすることは許されない。周辺自治体についても同意権を認めるべきである。
避難計画にも問題がある。政府は18日に福井、京都、滋賀3府県の計画を了承したが、府北部や福井県から府南部、兵庫県などへの避難では、道路の渋滞やバスの確保、高齢者ら支援が必要な人の移動といった課題が残る。3府県の住民が参加した合同訓練もまだ実施されていない。避難計画の実効性が確認できないまま再稼働するようでは、安全軽視の見切り発車というほかない。
ソース
京都新聞 社説 - 高浜再稼働同意
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20151223_4.html