河合 薫 2015年6月23日(火)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/061900001/
今回は、ちょっと前から取り上げようと思いながらも、どう書いていいか分からなかったことについて書こうと思う。
テーマは……、男と女の恋愛学……。違う。社内恋愛…。ううん、なんかしっくりこない。恋のとばっちり? ……ああ、ますます違う。
まぁ、いい。とりあえず“事件”としてはその手の類いですので、ご一緒に考えていただけたら幸いです。
知人の会社で部長職の女性Aさんが、ある男性社員と一緒にいたところを目撃され降格になった。
「女性は公私混同しがち。仕事の妨げになる」
上司からそう言われ、Aさんだけ異動させられたのだ。
昔から社内結婚をすると、どちらかが異動になるなんてことはあったけれども、大抵の場合、異動させられるのは女性だった。当時は
「そういうもの」としてスルーしていたけど、今考えれば、これも何だか分からない慣習だったように思う。
で、知人いわく、
「せっかくの追い風が、逆風になった」のだと。
彼女はそう嘆いていたのだ。
状況を説明しよう。異動になった女性Aさんと知人は同期。2年前に、共に部長に昇進した。どちらのポジションも女性が部長に
なるのは初めてのことで、「やっと女性の役員候補が誕生した」と周りの男性たちも歓迎していたそうだ。
ところが、である。
「Aさんが同じ部署の後輩Bクンと同棲している」との噂が飛び交った。なんとAさんと同じマンションに住む同僚が(Aさんは同僚が同じ
マンションに住んでいることは知らなかったらしい)、Aさんと時間差でマンションから出社するBクンを目撃したのだという。
「Aさんは入社したときから、めちゃくちゃ頑張ってきた人。周りの評価も高くて、いずれは女性初の部長になるって、誰もが認めてた。
ただ、なんやかんやいってもウチの会社は元々部長のポジションが少ない。恐らく“女性活用”の風がなかったら、彼女も私も昇進
できなかったか、部長になったとしても、今ほど重要なポジションには就けなかったと思う」
「ところが、安倍政権の数値目標が追い風になって。新しもの好きの社長は(笑)、『役員候補の女性も育てよう』って、今の部署を
任されることになったわけ。なのに、今回の一件が発覚した途端、上層部の空気が明らかに変わった。あからさまに彼女を非難する
ようなマヌけな人はいないけど、明らかに『だから女は』感がアリアリの空気がまん延しているの」
「その空気が『見える化』したのが、彼女の異動。Aさんは当然納得できずに、異動の理由を上司に聞いた。そしたら、『期待して
いたのに、残念だ』って言われたらしい。噂が飛び交うまで上司からの評価は、私なんかよりよほど高かったのに。AKBじゃあるまいし、
なんで同じ部署の男と付き合ってるってだけで、とやかく言われるのかちっとも納得できない。でも、多分これで私の役員への道も
閉ざされたね。私は彼女のように独身ではないし、大学生の娘もいるけど。上層部の差別的態度は、めちゃくちゃ感じるようになった
からね」
「でも、ホラ。昔から、『役員になってやる!』って言ってたから、○子は○子で頑張ればいいだけなんじゃないの?」(河合)
「いやぁ~、難しいと思う。それこそ具体的に、何があったってわけじゃないんだけど、うん。難しい。頑張るけど……。いやあ、
やっぱり難しいね」
30代前半に組合活動をしてから、「役員になってやる!」と息巻くようになった知人は、ため息まじりにこう