睡眠不足の虫は作業が雑になる
昆虫はどんなふうに眠るのか
2015.05.25
人間が眠っているのはすぐにわかる。大いびきをかいていればなおさらだ。
ところが動物の場合、寝ているかどうかを判断するのは難しい。
この記事では、Facebookを通じて寄せられた「虫って眠るの?」という質問に答えてみたい。
「答えはYESです。注釈が付きますが」と言うのは、米ウィスコンシン大学ラクロス校の生物学者
で、ミツバチの睡眠について研究しているバレット・クライン氏。アシナガバチ、ゴキブリ、カマキ
リ、ミバエなどは眠る虫の仲間だ。特に、ミバエの睡眠は、哺乳類の睡眠とよく似ており、睡眠導入
物質やカフェインに対して同じ反応を示すのだという。
しかし、昆虫の睡眠を評価するのは困難だ。たとえば、「睡眠」と「睡眠しているような状態」を区
別するのは容易ではない。
■虫の睡眠どう見極める?
虫が本当に眠っているサインは、動かず、「重力の方向にうなだれ」、筋肉が弛緩している状態だ。
「覚醒閾値」も、判断材料のひとつ。虫を揺すって、覚醒するまでにかかる時間を測定する。
ミバエには「睡眠反跳」があることも、実験で明らかにされた。睡眠不足になったミバエは、その反
動で長い睡眠時間が必要になる。忙しい人なら、身に覚えがあるだろう。
オレゴン州立大学の生物学者、ケイティ・プルディック氏は、チョウは休憩するものの、「寝ている
かどうかはわからない」と言う。チョウは夜に羽を休め、「気温が一定値より低くなると動けない」。
一見すると眠っているようだが、実際は休眠と呼ばれる活動停止状態である。
■雑なダンスを踊るミツバチ
プルディック氏によると、チョウは、午後遅くに「就寝する」とのこと。葉っぱや木の皮などの隠れ
場所からぶら下がるのだ。十分な休息を取らないと、エサを取ることができないし、メスのチョウ
は、アオムシが食べない植物に間違って卵を産み付けてしまう。
睡眠不足が深刻な問題になるのは、人間だけではなく虫だって同じなのだ。クライン氏は2010年、
極めてひどい音を出す「不眠機」を使って、ミツバチの睡眠不足について調査した。鉄のタグが付け
られたハチは、「不眠機」の磁石が作用して睡眠が阻害され、銅のタグが付けられたハチは、同じ巣
に住みながら十分な休息を得られるようにして実験を行ったのだ。(参考記事:「ミツバチが消える
「蜂群崩壊症候群(CCD)」と闘う」)
ハチは、「尻振りダンス」と呼ばれる動きで、エサの場所や巣の候補地についての情報を交換す
る。この調査では、睡眠不足のハチが「正確な道案内ができるハチとは明らかに異なる動きをする」
ことがわかった。たとえば、寝不足のハチのダンスは雑で、よく寝たハチのダンスほど役立たない。
夜通しテレビを見て、注意力散漫になる人と同じだ。あなたのテレビには、磁石が仕込まれていな
いだろうか。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp//atcl/news/15/a/051900002/