小社会 善と悪
「アンパンマン」は子ども向けアニメだが、大人もはまる面白さがある。たくさんのキャラクターが登場し、それぞれ長所と短所があって、はらはらどきどきさせられる。
例えばロールパンナ。アンパンマンの友達メロンパンナの姉で、善人と悪人の二重人格という設定だ。妹を助けたり陥れたり。ジャムおじさんがロールパンナをつくる際、ばいきんまんがこっそりと「ばいきんジュース」を混ぜ込んだためという。
優しいだけの姉にしなかった理由を作者やなせたかしさんが著書で語っている。「善人にも悪い魂はある。悪い人間にも善良な部分はある」「ぼくは人間のそういう部分も書こうと思っています」。
アンパンマンの世界は人間の二面性を捉えるとともに、やなせさんなりの善への希望なのかもしれない。懲りない悪玉ばいきんまんも憎めない役どころだ。もちろん現実は厳しい。善を装った悪は多く、やなせさんも「悪を見破るのって難しい」。
特に政治の世界は悩ましい。歴史を振り返っても国民が犠牲になる悪政は繰り返されている。為政者は自分では悪政と考えていないから始末に負えない。
知らず知らずのうちに、ばいきんジュースが紛れ込んでいないだろうか。豪腕ぶりを見せる政権や米中の動向もしっかりと見極め、論議していきたい。根っからの悪い為政者でない限り、軌道修正はできると信じて。きょうはやなせさんの７回目の命日。
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